メッセージ・当医局の特徴
琉球大学皮膚科教室は、皮膚腫瘍を対象とする皮膚外科グループと、膠原病・アレルギーグループがうまく融合し機能しており、高度で果敢で責任を持った治療を行っています。
卒後教育として、皮膚疾患全般の知識、入院患者の全人的なとらえ方、皮膚病理の読み方、現在の皮膚科学の限界、次に何にチャレンジすべきかなどの問いかけとともに、将来の臨床研究や基礎研究の足がかりとなるよう、自分の頭で考えてまとめ上げられるよう指導しています。1人の患者さんを深く観察し続け、考える。全ての患者・症例は何某かの点では典型ではない。その点に気付けるように、若い研修時期に自分で考える習慣が大事です。生涯を通じて自分の専門性は損なわず、知的な楽しみを維持しながら皮膚科医として働き続けられるように指導することも心がけています。
沖縄・琉球諸島に多発する幾つかの皮膚症の病態解明も主眼として研究しています。沖縄県や近隣の諸島には地理的、歴史的、人類学的な特徴から、当地に特徴的な皮膚疾患が存在します。この地域に固有の皮膚疾患の疫学、病態、治療に取り組むことは使命であり、学問的なチャレンジの機会です。実際には、頭部血管肉腫、カポジ肉腫、色素性乾皮症、背部弾性線維腫、ハンセン病、さらには学童に蔓延する薬剤抵抗性のアタマジラミ症など、沖縄の公衆衛生に寄与すべく、これらの病態解明や治療に取り組んでおります。
創傷治癒の研究では、ケニア国立霊長類研究所でのアヌビスヒヒやサイクスモンキーなどの霊長類や、ヒト型皮膚のモデルである県内種アグーブタを用いて解析を行い、霊長類を含めた哺乳類の中で、ヒトのみが皮膚の創傷治癒が著しく遅延したミュータント動物であり、創収縮能力を欠損する動物であることを見いだしました。ヒトが進化の過程で他の類人猿とは大きく異なる皮膚を獲得する一方、創傷治癒の能力を失ったのは何故なのか、研究を行なっております。
医局の医師のほぼ半数を占める女性医師も、育児をしながら、研究や専門性を持った診療を続けています。人生の一時期をゆったりとした時間が流れる沖縄で過ごし働いてみたいと考える皮膚科医も、出身大学や男女問わず歓迎いたします。
皮膚科学講座 教授 高橋健造