ウパダシチニブにより寛解に至ったアトピー性皮膚炎患者の実臨床における 後ろ向き観察研究(研究期間:2024年5月2日~2025年3月31日)
1.研究の概要
1)研究課題名
「ウパダシチニブにより寛解に至ったアトピー性皮膚炎患者の実臨床における後ろ向き観察研究」
2)研究の背景
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が特徴の皮膚疾患で、良くなったり悪くなったりを繰り返します。アトピー性皮膚炎の治療は、症状に応じて「薬での治療」、「スキンケア」、「悪化させる原因の対策」の3つを組み合わせますが、低下した皮膚のバリア機能を回復させるために保湿を中心としたスキンケアが大切です。治療の目標は、症状がないか、あっても軽微ないし軽度で、日常生活に支障がなく、薬での治療もあまり必要としない状態を維持することです。この状態を寛解と言います。
湿疹やかゆみの症状がある時は、皮膚の炎症を抑える塗り薬による治療が主体になります。また塗り薬だけでは症状が良くならない場合には、飲み薬や注射薬などを使用します。症状によっては紫外線を照射する治療を行うこともあります。
本研究で調査するウパダシチニブ(商品名:リンヴォック錠)は、2020年4月から関節リウマチの治療薬として販売が開始されたJAK阻害薬という新しい内服薬です。その後、従来の外用薬による治療で効果が得られないアトピー性皮膚炎に対して有効性が認められ、2021年8月25日に適応追加承認されました。
3)研究の目的と意義
本研究では、リンヴォック錠が実際にどのように使用されているか、また症状が良くなった状態(寛解)をどのくらい維持できているか、どのような治療が併用されているかなど、治療の実態に関する情報を、受診された患者さんの診療記録(カルテ)から収集し解析します。
この研究により、アトピー性皮膚炎に対するリンヴォック錠のより適切な使用方法を臨床現場に提供すること、またアトピー性皮膚炎の患者さんに対するより良い治療法の提供に貢献することが期待できます。
2.研究の方法
1)研究対象者
以下のすべての条件に当てはまる方:
・202X年X月XX日(当院でリンヴォック錠の処方を開始した日)から2024年3月31日までに、当院にアトピー性皮膚炎の治療で通院された患者さん
・アトピー性皮膚炎の治療のためリンヴォック錠を服用して、その後寛解に至った患者さん
・リンヴォック錠による治療開始時の年齢が12歳以上の患者さん
・寛解後1年間以上の診療記録(カルテ)がある患者さん
2)研究期間
研究実施の許可日(2024年5月2日)から2025年3月31日
3)研究方法
本研究では、対象となる患者さんの診療記録(カルテ)から患者さんが受けられた医療情報を収集します。収集した情報を解析することで、実臨床でのリンヴォック錠の使用実態を調査、分析します。
4)使用する情報について
診療記録(カルテ)から収集する情報は、以下のとおりです。
性別、年齢、身長、体重、アトピー性皮膚炎の病態に影響すると考えられる生活習慣、職業、医療保険区分、合併症、既往歴、アトピー性皮膚炎の治療歴(発症時期、治療歴、入院歴等)、リンヴォック錠の使用履歴、アトピー性皮膚炎の症状、臨床検査値 等
患者さんの診療記録(カルテ)から収集した情報は、研究用の新しい符号を付けて個人情報がわからない形で管理します。これらの情報は、セキュリティが担保された手段で研究実施主体組織に提供されます。
3.研究実施体制について
本研究は、特定非営利活動法人 皮膚の健康研究機構が研究実施主体として、全国の皮膚科専門医が診療を行う医療機関(約30医療機関)が参加して行われる研究です。
研究実施主体:特定非営利活動法人 皮膚の健康研究機構
理事長: 宮地 良樹 (京都大学 名誉教授/皮膚科専門医)
4.本研究における研究代表者
本研究は、研究実施主体組織の研究責任者が統括管理します。
研究代表者: 特定非営利活動法人 皮膚の健康研究機構 理事
常深 祐一郎 (埼玉医科大学 皮膚科 教授)
5.あなたの情報を利用させていただく研究者等について
当院は、全国で実施される本研究の共同研究機関です。あなたの情報は、当院の研究責任者または研究責任者に委任された研究者等が利用させて頂きます。
研究責任者:琉球大学病院皮膚科 講師 山口さやか
6.プライバシーの保護(個人情報等の取り扱い)
あなたのプライバシーに関わる内容は保護されます。
本研究で収集する情報やデータは、電子メールやインターネット上の共有フォルダを介して研究実施主体組織へ提供・共有されます。その際に、あなたの情報やデータは、氏名等の個人を特定する情報が削られ、代わりに新しく符号を付けることでどなたのものかわからないようにします。あなたとこの符号とを結びつける対応表は、あなたの情報を頂いた研究機関で厳重に管理され、あなたのプライバシーに関わる情報は保護されます。
7.研究参加による費用、リスクおよび利益
本研究への参加において費用はかかりません。本研究では「試料」の提供はなく、新たに検査を行ったり処置をしたりすることはありませんので、リスクは生じません。また、参加することで謝礼等の利益が得られることはありません。
8.あなたの情報の利用または他の研究機関への提供を希望しない場合
本研究にあなたの情報が利用されることや、他の研究機関へ提供されることを希望されない場合は、下記までご連絡ください。協力をご了承頂けない場合でも、あなたに不利益が生じることはありません。その他、本研究について質問等がありましたら、遠慮なくご相談ください。
【当院における問い合わせ先】
問い合わせ部署:琉球大学皮膚科医局 担当:山口さやか
連絡先:098-895-1153
(対応可能時間帯) 平日 9時から 16時まで
9.研究に関する情報公開
本研究の成果は、学術雑誌や学術集会を通して公表する予定です。なお、その際も参加された方々の個人情報などが分からない状態で発表します。
10.研究により得られた研究成果等の取り扱い
本研究で得られるデータまたは発見に関しては、研究者もしくは研究者の所属する研究機関等が権利保有者となります。本研究で得られるデータを対象とした解析結果に基づき、知的財産権等が生み出される可能性がありますが、ある特定の個人のデータから得られる結果に基づいて行われることはありません。したがって、あなたが経済的利益を得ることはなく、あらゆる権利は、研究者もしくは研究者の所属する研究機関等にあることをご了承ください。
11.本研究の資金源および利益相反(COI:Conflict of Interest)について
研究一般における利益相反の観点から、研究の資金源や、各研究者の利害関係を申告することが定められています。本研究は、リンヴォック錠の製造販売企業であるアッヴィ合同会社からの資金提供を受けて実施します。本研究について、企業等の関与と研究責任者および研究分担者等の利益相反申告が必要とされる者のCOIについて、倫理審査委員会の手続きを終了しています。また、各研究機関においても、利益相反関係を把握し、生命・医学系倫理指針を遵守して適切に対応しています。